水島くん、好きな人はいますか。

ハカセに≪実験でわたあめ作るから、時間あったら食べにおいで≫と誘われていた。


瞬用にお持ち帰りさせてもらえばいっか。


最近瞬は、わたしが誰と関わってもそんなにうるさくない。嬉しいような、ちょっとだけ、困るような。


それは瞬がわたしを認めてくれたのかな?って思える嬉しさと、わたしが――…。


「うわっ!? あっ、ごめんなさい!」


曲がり角で人影と接触しそうになったわたしは驚きから仰け反り、その反動で浮いたバッグの角が、相手の手に当たってしまったらしい。


A4サイズの封筒から、ばさばさっと中身が落ちた。


「ごめんなさい! 前見てなくてっ」


大急ぎで散らばったプリント類を拾い集める。


うう、どうしてこんなに鈍くさいの……あれ?


端を揃えたプリントの1枚目には、入学後の手引が記載されていた。今日は午後から外部生の入学手続きがあるため午前授業だったのだから、間違いない。


外部生……!


りっちゃんのごとく反応したわたしは、面食らう。


同じようにしゃがみ込んでいた彼はプリントを拾っていた様子もなく、じっと射抜くような視線をわたしに向けていた。


健康的にほんのりと焼けた肌。アッシュグレージュの長めの髪はゆるいパーマがあてられている。


水島くんとはまた違った美……少年? 本当に中学3年生? 私服だし、弟の代わりに来たとか、ありえる。
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