水島くん、好きな人はいますか。

……最後だから?


こんな夜は今日が最後だろうって思うから、水島くんとふたりきりにさせてくれるの?


なんのために? 話すことなんか……ないのに?


「文句ならあとで聞いてやる。ねじふせるけど」


手の甲を上にしたそれを差し出してきた瞬は、告げる。


「俺はお前がしたように、俺も万代のことを考えて行動してやったんだ、ってな」


――バチン! 掴もうと伸ばした手のひらを強く叩き落とされた。


「いっ……!」

「頑張りやがれ」


力加減っていうものを……っていうか、叩かれるために出したわけじゃないのに、本当に置いてく、とか……。


じんじんする手のひらから、意識を水島くんへ向ける。


「あ、あはは……瞬どうしたんだろうね、いきなり」

「俺はかまわんけん」


ごまかそうとするわたしを細められた知的な瞳が射抜く。


「万代とふたりになるの、嫌いじゃなかし」

「……、」


ためらいのない台詞だから、どきどきと胸が騒ぐ。
ためらう必要のない台詞だから、ずきずきと胸が痛む。


あからさまにふたりきりにされても、水島くんは狼狽しない。嫌がらない。照れだってしない。


おだやかに微笑んでくれる水島くんは、優しいね。


それはわたしの気分次第で、至福にも残酷にもなってしまうけれど。


「やっぱり水島くんは、笑ってるほうがいいなあ」


きょとんとした顔が、困ったものに変わる。
< 362 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop