水島くん、好きな人はいますか。


「瞬の許可なんか欲しくない」

「おい、いい加減にしとけよ。自分で蒔いた種だろーがっ。お前はもっと自分が恰好の標的だってことを自覚しろ!」

「瞬に怒られなくたってわかってるよ!」


瞬の言葉が引き金になって、声を張り上げる。


そうだよ。本当は、わかってた。
わからないで瞬の言うことを聞くほど従順じゃない。


瞬はわたしの存在が恥ずかしいんだって思いながら、瞬が怒る本当の理由に気付かないふりをしていた。


わたしが、恰好の標的になる自分を、恥ずかしく感じているから。


涙が滲みそうになったとき玄関の開く音がして、これ幸いと部屋から飛び出した。


「おかえりなさいっ」

「ああ、ただいま」


帰ってきたお母さんに少なからずほっとする。


「ご飯作ろうか?」


このまま瞬と話さずに済めば、という思いも交じっていた問いはすぐに拒絶される。


「いらないから部屋にいなさい」

「……っ、」

「あれ、瞬くん。いたんだ」

「どーも。……こんばんは」


真横に立った瞬が挨拶をしたのは、お母さんと、リビングに入ってきた見知らぬ男性だった。


お母さんはスーツを着た男性に「適当に座って」と言うだけで。説明してくれる気配はなくて。


説明するほどの関係じゃないのかもしれないけど、でも、こんなことは初めてで――…。


わたしの竦む足にいち早く気づいたのは瞬だった。

瞬しか、いなかった。
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