桜下心中
 圭太の授業が終わったらこの部屋で会う。それがお互い時間のある時の約束。

 わたしは通院以外は日がな一日家に居たりするので、圭太の都合でこの逢瀬は成り立っているけれど。

 今日、ちょっと遅くなるけれど、圭太はなにか甘味を買うと言っていた。あんみつかなぁ、おしるこかなぁ。

 この部屋で圭太を待つ時間は楽しい。ここまで移動するのにちょっと骨が折れるけど。

 本当は、ここのところ、頻繁に発作がある。圭太には言わないようにしているけれど。

 石沢先生には、その発作が楽になるような、治まるような薬を新しく貰っているのだが、今までの「体を良くする薬」より「痛くなくなる薬」にしてもらったような感じだ。

 圭太と居れば、病気のことも忘れられるし、このまま病気も治るんじゃないか……と思ったりする。


 そういう奇跡を夢見る。

 いつ、わたしは止まってしまうのだろう。


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