バケバケ


少女は携帯を持ったまま唖然として自分を見つめる灰音に目をやった。


「おい、若造。救急車など呼ぶ必要はないぞ。」


そしてまた俺を見た。


「久しぶりであるな、シイ。」


俺は…この少女を知っている。


「…ステ神。」


この少女に名前はない。


―ステ神―


そう呼ばれている。


「様をつけろ、馬鹿者。ボクは神であるぞ。」


この少女こそ、俺に契約を持ち掛け、黒い炎を授けた張本人だ。


「どうしてここに来た…」


「なんだ?来てはいけないのか?…黒い炎の強い気配がしたのでな、見に来たのだ。」


「……。」


「シイ、黒い炎を使いすぎだ。……死ぬぞ。」


「…悪いが、今はお前にかまってる暇はないんだ。……洋子が…」


するとステ神は鼻で笑った。


「さっきも言ったであろう。……ナメるなよと。」


「?」


ステ神は俺の隣にしゃがむと、洋子の額に手を当てた。


「敵の気に当てられただけだ。」


「洋子は…助かるのか?」




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