芽衣の恋愛論
人の輪の中に零次君がいた。
零次君は私たちに気づくと輪を抜けてこちらに来た。
「来てくれたんだ。」
いつもとちょっとちがくて照れ臭い。
零次君は私を見た。
「よ、久しぶり。」
と挨拶してくれた。
「この間はありがとう。これ借りた洋服。」
と渡そうとしたら零次君は誰かに呼ばれた。
「ごめん、終わるまで持ってて。」
と言いながら行ってしまった。
零次君のステージは一言で言ってかっこ良かった。
かっこいいって言葉しか出てこない。
ダンスをライブで見たのも初めてで、
かなり興奮していた。
男の人だけど足の先から指先まで動きがきれい。
私は由美ちゃんに『すごいねすごいね』を連呼していた。
ダンスしてるところを見たら別人みたいで、服を渡すのやけに緊張した。
控え室の前でドキドキしながら待っていた。由美ちゃんはトイレに行ってしまったので1人。
なんかスターを待っているみたい。
零次君は出番終わってすぐ衣装のまま、目の前に現れた。
テンションが上がっているのか、軽くハグしてきた。
私は硬直して動けなかった。
「か、かっこ良かった。」
私は言った。
「そうだろう?惚れんなよ。」
口を開くといつもの零次君だった。
自信満々の言葉だけど、嫌味が無くてむしろ好感が持てるのは何故だろ。
私は笑顔になった。