妖魔05~正道~
今ので魔力がほぼゼロになってしまった。

一撃与えるだけで、大量の魔力を使う事になるとはな。

「一つだけ、教えてやろう」

「何だ?」

「里の妖魔達は解放された」

「そうか」

誰がやったかなど解っている。

ミールオルディンに所属しておらず、廃墟にいた半妖。

葉桜のような甘い輩ならやりかねない。

「だからなんだ?俺はお前等の組織を完全に潰す」

「笹原冬狐はどうする?」

「お前を始末する事に代わりはない」

「情を挟まぬか」

再び、闇の渦から龍が顔を見せる。

「俺からも、一つだけ教えてやる」

暗殺者からの返答はない。

「笹原冬狐が今の状況で死ぬようなら、すでに絶望して自殺している。だが、生き残った。面倒くせえ事に、あいつは死なないだろうよ」

答え終わると、龍が飛び出す。

俺は同時に走り出す。

龍は、闇で出来ている。

闇は光の中で生きる事が出来ない。

俺は再び光の中へ走ろうとする。

しかし、暗殺者がナイフを真横に投げて転移させ、電灯を破壊する。

傍には、光のある世界はなくなった。

「ち!」

近づく事すら難しいというのに、勝ち目がなくなったようにも思える。

先ほどまでいた家の窓付近から燕のニオイが鼻に届く。
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