妖魔05~正道~
ナイフによって懐中電灯を割られる。

「ち!」

予めもう片一方の手に装備していた予備の懐中電灯を向けると、龍は消えた。

しかし、その行動のせいで回避が遅れ、ナイフが肩甲骨に刺さる。

「いてえ」

何故、無制限でナイフが投げつけられるのか。

攻撃を与えられながらも、考えていた。

それは、無制限なのではない。

飛ばしたナイフを転移させて、自分の手元に戻しているのだ。

人間であるのにも関わらず、魔力の豊富さには驚かされる。

「はあ、はあ」

再び攻撃を受けて血を流し、魔力はゼロ。

身体能力と残りの懐中電灯だけで何とかするしかないようだ。

暗殺者は、圧倒的に強い。

だが、全くといっていいほど、隙がないわけでもない。

能力にはメリットがあれば、デメリットもあるはずだ。

龍は闇の中であるならば最強だというメリット。

しかし、闇の中だけしか泳げないというデメリット。

転移能力のデメリットを考えろ。

だが、考える事をさせず、ナイフと龍が飛び交う。

「くそ!」

そのおかげで、逆にヒントを得た。

龍が転移する際に顔がこちらに出てくるわけだが、尻尾は向こう側にあるという事。

それが何を意味しているか。

簡単な事を見落としていた。

向こう側とこちら側は繋がっている。
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