妖魔05~正道~
暗殺者が遠距離攻撃を近距離攻撃に変えてしまった時点で、勝敗を分けた。

俺の間合いに入ったのだ。

魔力はゼロだった。

しかし、時間を稼いだ事により一回だけ使用可能だ。

暗殺者が高速無音で近づく。

経路は読めている。

俺は、ナイフを落とす。

暗殺者が闇からナイフを振るう。

「あっち向いてホイ」

怯む事無く落としたナイフの刃先を暗殺者に向ける。

そして、柄は俺側に向いている。

暗殺者のナイフを片手で防ぐものの、腕が飛んだ。

同時に俺は柄を蹴り、暗殺者の胸にナイフを放つ。

暗殺者も腕で防ぐがまだ終わりではない。

妖魔である俺の攻撃速度の方が上らしく、逃げる前に上から拳を放つ事を可能にした。

ナイフが腕を貫通し胸を貫通し、心臓に達す。

「が」

暗殺者の体は後方へと飛び、地面へと転がった。

「はあ、はあ、ち」

腕から、大量の血が流れる。

俺は膝を付いた。

「面倒くせえ」

「さすがは、私のフィアンセだ。相変わらず惚れ惚れする格好良さだぞ」

傍観していた燕が傍に立っている。

「うるせえ、黙っていろ」

「そういうな。私はお前が生きていて嬉しいんだ」

燕が俺の体に触れ、肉体を癒す。

「死より出でて生に戻りたまえ」

同時に聞き覚えのある声が耳に届く。
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