才能に目覚めた少年
9. 覚醒
僕は仰向けに倒れると森下先生の顔が逆さまに見えた。



僕はお腹を見た。






メスが一本刺さっていた。





痛い…。





「先生…」




「話さなかったのは話すと拒否されると思ったからだよ。
刺されることを喜ぶ人なんていないからね。
それに神山君本人から了承をもらったから」



「僕はこれからどうなるんですか」


「このままだと死んでしまうよ。
確実に。
私は医者だが君を助ける気は無いから自分で何とかしてくれ」


「病院まで自分の力で歩けと言うんですか」


「それもいいんだけど、今日は休みだよ」



そうだ。



今日は病院が休みで森下先生に特別診察をお願いしたんだ。



だとすると残る手段は一つしかない。




「神山君、君は分かるはずだ。
助かる方法は一つしかない。
能力を使うんだ」



「そんなことを言っても…」



「それじゃあ、しばらく頑張ってくれ」



森下先生は僕から離れていった。



本当に助ける気が無いのだろう。







しばらくすると、僕の意識が薄れてきた。


僕は空を見つめていた。


太陽が眩しかった。



才能だとか能力だとかどうでもいいと思った。


僕の能力などもう当てにならないからだ。


死ぬ前に伊藤、辻本、山本、ナナミに会いたかった…。


僕は目を閉じようとした。


僕は生きることをあきらめた。




最後にナナミともう一度会いたい…








僕は死んだのだろうか。



目をあけると、車が燃えていた。



御父さんは僕を外に逃がした。



お父さんとお母さんが車の中で燃えていた。



救急車と消防車が来た。



水を操る人と水を造る人が共同で車の炎を鎮火した。



僕と両親は病院に搬送された。



同じような夢を何度も見た。



どうせ搬送されている最中で夢は終わるはずだ…







でも今回の夢は終わらなかった。
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