世界を敵にまわしても
「思ったけど、アンタの鞄だったから届けた」
同性なのに、あまりにも綺麗な顔と低い声に、思わずドキッとしてしまう。
……これは、菊池さん達が嫉妬するのも分かるけど。あたしのだから届けたって、どういう意味だろう。
「それは、あたしは嫌われてないってこと?」
「何ソレ。お互いさまじゃん」
「……は?」
あ、しまった。
手で口を抑えたけれど、黒沢さんは小首を傾げて不思議そうにする。
と思ったら、まるで先生みたいにニヤッと口の端を上げた。
「やっぱな。アンタ、そういうキャラだと思ってた」
「……そういうキャラって」
「ウチと一緒ってこと。菊池とか謎だと思ってんべ」
驚いた。まさか、そんな事を言われるとは思わなくて。
でも、ちょっと思ってた。もしかしたら、性格が少し似てるんじゃないかって。
「……」
あぁ、何か。
凄く自分が汚く見える。
あたしが菊池さん達やミキ達をくだらないと思ってても、それを表に出す事はなくて。
それを黒沢さんは気付いてたのに、あたしを嫌いだとは言わなかった。
「……黒沢さんって、強いよね」
「はぁ? 言っとくけど、ウチは別に1人が好きとかじゃないかんね。性格が合わないんだよ、菊池とか特に」
あたしと一緒だ。
あたしもミキ達とは合わないし、菊池さんとも合うとは思えない。それなのに……。