世界を敵にまわしても


「……あたしは、自分で居場所を見つけようと思ってたのに」


先生が先回りするから、出来なかった。


「自分で見つけたでしょ?」

「菊池さんに言いたい事言えたのは、先生が……わざと、菊池さんだけ責めるようなことしたから」

「……教室でも言ったけど、俺は何もしてないよ」


聞いたよ。

今日だけじゃない、前も言ってた。家族のことでお礼を言った日に。


『俺は何かしたいわけじゃないよ。高城と、ただ話してるだけ。でしょ?』


「俺はまず、菊池に話を聞こうとしただけ。そしたら高城が自分で割って入ってきて、あぁなったんだから。俺が仕向けたなんて事はないよ」

「……でも」


そう言われると分かって、微笑まれると分かっていたのに。それでも今回ばかりは言い返せるように、たくさん考えてたはずなのに。


「高城はあの時、あの場所で、誰の力も借りず自分で素を出したんだよ」


優しく微笑む先生を前にすると、何も出てこなくなる。


「……先生はズルい」

「え? 何で?」

「高みの見物みたいでムカつく」

「うん、言葉に棘があるね」


だって悔しい。


あたしばっかり必死で、腹立てて、格好悪い。

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