世界を敵にまわしても
「話せないなら歌えばいいんだよ!」
掌を上にして、人差し指であたしを指す晴が不可解だ。どういった考えで歌うに辿り着くのか、あたしの頭では思い付かない。
「いい! これナイス! そうしよーぜ美月!」
「え、ちょ、待って! 何が!?」
腰を上げた晴に慌ててあたしもベッドから足を出して、体ごと晴と向き合う。
「歌うんだよ文化祭で! 美月が!」
「は!?」
あたしが!? 何で……!
訳が分からないのに、晴はあーしてこーしてとまだ何か考えている。
「晴……っ! あたしが歌うって何!?」
「何って、もー! 俺らのライブで、美月が歌うってこと! サプライズゲスト的な?」
文化祭で、晴たちのバンドのライブで……。
「それ体育館じゃん!!」
「ライブなんだから、ステージ占領するに決まってんだろー!? やべぇ、やる気出てきた!」
意味が分からない! 大体話せないなら歌うって発想が分からない!
「待って晴! そもそも何の歌を……」
シャッ! という音が、あたしと晴の温度差が激しい空気を切り裂く。見ると、いつからいたのか椿がカーテンを開けて立っていた。
「歌詞つけて美月が歌うんだよ」
「……か、歌詞?」
椿は言わなきゃ分からないのかと言いたげに、ハァと溜め息を吐いてからあたしを真っ直ぐ見詰める。
「朝霧が作った、あの楽譜の曲だろーが」
ベージュピンクの綺麗な唇から発せられた言葉に、あたしの鼓動はドクンと脈打った。