世界を敵にまわしても
「アイツいなくね?」
午後になって休憩に入ったあたしと椿は校内を練り歩いていた。
椿は先ほど3年生がやっていた模擬店の射的で当てたクッキーを食べながら、辺りを見渡す。
「……休んではないはずだけど」
こっそり椿と職員専用の駐車場を見に行って、先生の車があったから来てるのは確かなのに。
校内のどこを歩いても、肝心の姿が見えない。
「まぁどっかにいんだろ。生徒は後夜祭の参加自由だけど、教員は強制参加らしいし」
「だよね……」
最初は音楽室かとおもったんだけど、鍵が掛かっていたらしい。あたしはうかつに近付けないから、晴が確認してくれた。
……一目でいいから、先生の姿が見たい。
3週の間、もちろん音楽の授業はあったけど言葉を交わすこともなければ目も合わなかった。
ただそこに先生と生徒があって、何てことない普通の授業。
それは当り前で、分かっていたことで。だけど後夜祭が始まる前に一目、先生を見たかった。
今週の火曜日にあった音楽の授業を最後に、あたしは4日間先生を見ていないから。
逢えなくて、話せなくてもいいから。どれだけ短くても、どれだけ遠くても、この眼に先生を映したいんだ。
そうでなければ、今まで自分がどれだけの時間を先生と共有したか、思い知らされる。
どうしようもなく、寂しくなる。