世界を敵にまわしても
そっと静かに、流れるように心に染み込む音。
少し長めな前奏は、やっぱり泣いてるようだと感じた。
……先生は体育館のどこかで、あたしを見ていてくれるかな。
まさかあたしがここに立つなんて、先生の曲を歌うなんて思わなかったよね。
自分でも予想しなかったことなんだから、きっと驚いたと思う。
ねぇ、先生。
冷静だった頃のあたしは、どこに行ったんだろうね。
きっともう、見つけることも戻ることも出来ない。先生に出逢って、色んなことを知ってしまったから。
ドラムとギターとベースの音が重なり、洪水のように波となって押し寄せてくると、あたしはマイクを口元に持っていき、息を吸った。
――あのね、先生。
昨日、先生の夢を見たよ。
自分で苦笑してしまうくらい、あたしは意地っ張りで強がりで。頑固で、素直じゃない女の子だった。
そしたら先生が現れて、優しく微笑んで手を差し伸べてくれたの。
差し伸べられた手を無視して、先生に背中を向けて歩いて。
それでも追い掛けて来る先生に、あたしは呆れたように何度か振り向いて、気付いたら足を止めて向き合ってたの。
音はなかった。声も、会話も聞こえなかった。
だけど表情で、何を話してるのか分かったんだ。