世界を敵にまわしても
保健医が保健室利用届を記入してる間に上靴を足に引っ掛けると、ベッド横の棚に見覚えのある鞄が目についた。
……あたしの鞄? 持ってきたっけ?
「あの、これ……あたしの鞄ですよね」
「え? ああ、そうそう」
机に向かっていた保健医が立ち上がり、利用届けを差し出される。それを受け取ると、保健医は身振り手振りである人の髪の長さを表現してきた。
「ほら、同じクラスの。凄い美人で、赤と金色の髪した……」
「黒沢さん……?」
保健医は強く頷いて、あたしの鞄も差し出してくれた。
「出席番号が高城さんの前なんでしょ? 席もかな。それで、担任の先生に持ってけって言われたんだって」
あの担任……つくづく余計な事をしてくれる。
顔が未だに覚えられないけど、空気読むことを覚えてほしい。
「……黒沢さんは」
「鞄置いてすぐ帰っちゃったわよ。あの子綺麗だけど、雰囲気が怖いのよね~。担任の先生、勇者ね」
ほんとだよ。ミキ達じゃなく、まさか黒沢さんに頼むなんて。
どう考えても、お礼を言わなきゃいけないじゃんか。
「……じゃあ、帰ります。あたしも言いいますけど、今度黒沢さんが来たら先生からもお礼言っておいてもらっていいですか?」
「う、うん、分かった! お大事にね!」
……無理そうだな。
保健医に頭を下げて、あたしはぼんやり黒沢さんの事を考えながら保健室を後にした。