世界を敵にまわしても


やっぱりまだ大半の生徒は残っているらしい。


1階にある保健室から下駄箱の方へ歩くと、色んな生徒とすれちがった。


楽しげな声、ダルそうな声、少し怒った声。色んな会話が耳を掠めるけど、そのどれもが相手がいるから漏れる言葉だ。


あたしが今何か呟いたところで、それは独り言にしかならない。


……ていうか、今日あたしミキ達と話したっけ。


話した気がするけど、どんな内容だったかまでは思い出せなかった。


「やっべ! もう5時!? 電車乗り遅れるじゃんよ!」


下駄箱付近でそう騒ぐ男子の声が聞こえて、あたしは思わず足を止める。


同時に頭の中で計算して、まだ帰るには早すぎる事に気付いた。


1時間は時間潰さないと……。


夕飯の時間を過ぎなければ、あたしは家に入ることすら出来ない。居候者は、家族の食卓に混ざることは許されないから。


……図書室で、時間つぶせばいいか。


「今日駅前のカフェ行かない?」

「うん、行こーっ」


下駄箱のそばにたたずむあたしの横を通り過ぎた女子ふたりが、何てことない会話をして通り過ぎ、その笑顔がなぜかチクリと胸を痛ませた。


「……」


図書室は静かで1人の人も多いけど、ああいう会話が時たま聞こえる。


コソコソと小さな声で、誰かを相手に……。

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