世界を敵にまわしても


貰いぱなっしだったんであろうクッキーの箱を、今まさに開けてる朝霧先生を見ながら思い出す。


そういえば今年のバレンタイン、告白した生徒がいたって聞いたな。フったらしいけど、この人は後腐れなく上手くやりそう。


「ん、俺チョコがいい」


考えてた事を見透かされたのかと思って、一瞬ドキリとした。


「高城はどれ食べる?」

「いや、要りませんって」

「甘いの嫌いなの?」


バラエティ豊かなクッキーを見下ろして、あたしは黒い髪を耳に掛けた。


「そうじゃなくて。今寝起きなんで、ちょっと……」

「寝起き? 保健室にでもいたの?」

「はぁ、まぁ……」


ほんと、話が途切れないな。


「じゃあ飲み物の方がいいか。買ってくるよ、俺も飲みたいし。何がいい?」


え?と思ってる内に朝霧先生は箱を机に置いて、椅子から立ち上がっていた。


机の上にあった鞄から財布を取り出した朝霧先生が振り向いて、ハッとする。


「あの、いいです。自分で買ってくるんで」

「あぁ、一緒に行く?」

「そういうことじゃないです!」

「んー?」と不思議そうにしてる朝霧先生だけど、あたしの方がよっぽど不可解だ。


「そこまでしてもらう意味が分からないです」


申し訳ないけど、教師がそこまで親切だとは思えない。


何なんだろう、ほんとに。

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