世界を敵にまわしても
「いや、そういうのじゃなくて。あれは、ちょっと……」
どれだ。
どの辺りから聞かれてたのか教えていただきたい。
何て言えばいいのか分からず言葉を濁すと、唐突に宮本くんが笑った。
「高城ってデカい声出すんだーってビビったよ俺」
「……朝霧先生にからかわれて、つい」
「何だ、じゃあ修羅場じゃなかったのかー」
「全然。ほんとそういうのじゃないから」
「ならいいけどっ」
泣いてた理由を聞かないあたりも、さすが人気者なだけある。
気遣いとか、そういう優しさを持ち合わせてる人なんだと思った。
「まぁ、先生好きになるなんて有り得ないよなー」
「……」
「奏ちゃん優しいし、イケメンだし、人気じゃん? だからマジになる奴も居てさー。やめとけって言うんだけど、ダメでさ」
「そうなんだ……宮本くんは?」
「うぇえ? 何で俺? てか晴でいいって!」
ラジカセとクッキーの箱を持ちながら、宮本くんはあたしに振り返る。
……いきなり呼び捨てってのも違和感だけど、断るのも変か。
「じゃあ……人気って言ったら晴もだと思うけど」
宮本くんもとい晴は、呼び捨てに満足したのかニッと笑って前方に視線を戻した。