世界を敵にまわしても
昨日の今日で劇的な変化はなかったけど、朝ご飯はお父さんと食べた。
那月も兄もあたしより遅い時間に家を出るから、夜と同じでいつも1人で朝ご飯を食べてたんだけど。
今日はささいななことがいつもと違った。
お父さんが居たからかもしれないけど、普段自分で椀によそっていた朝食がテーブルに並んでた。
起きた那月があたしに抱き付いてきても、母は何も言わなかった。
存在自体を無視されていたのに、今日はチラチラと母の視線を感じた。
本当に些細なこと。
突然大きく変わるわけがないことぐらい、分かってる。
てのひらを返したように、母が急にあたしに優しく接するなんて母のプライドが許さないだろうし。
でも、変わらずにいるのも教育ママとして許せないんだろう。
昨日の先生の言葉がどれだけ効果覿面だったのか分からないけど、あたしに興味を持つ程度の威力はあった。
那月や兄にはまだ及ばなくても、ほんの微かな光が差し込んだんだよ。
「……先生」
変わるきっかけをくれた。失くしたはずの場所を、取り戻す勇気もくれた。
諦めかけてた。
多分、諦めてた。
全力でぶつかりもせずに、ちょっとしたことで挫けてたくせに。
どうしてあたしばっかりって嘆いて、傷付いてますって悲劇のヒロインみたいに。
それじゃ何も変わらないなんて、当たり前だ。