世界を敵にまわしても
「先生あたし、頑張るね」
自分で、あの家での居場所を取り戻せるように。
崩れてたのかもしれない家族も立て直すよ。それもきっとあたしのせいなんだろうけど。だったら、あたしが頑張る。
「ありがとう、って……何回言っても足りないけど。今日、ずっと言いたかったんです」
「……うん、ありがとう」
何で先生まで言うんだ。
「先生、まだ照れてるんですか」
「照れてませんーっ!」
「ははっ」
子供みたいにそっぽを向く先生に笑いが零れて、胸の奥が温かくなる。
そんなあたしを見た先生も笑って、今度はギュッと胸が締め付けられた。
変なの。
あたしは何も言ってないのに、家族のことで悩んでるのが分かったなんて。先生だって何も聞いてこなかったのに。
……あぁでも、やたら質問はされた。それで予想がついたり、分かったりするもんなのかな。
「……先生ってエスパーか何かですか」
「えぇ? 男はエスパーよりヒーローになりたいと思うよ」
なるほど。先生は、何でも分かって何でも出来るヒーローなのね。
「想像してみましたけど、何かアホっぽいですね」
「カッコイイの聞き間違いだと信じてるから、俺」
どちらからともなく零れた小さな笑い声が、静かな空間を彩った気がした。