世界を敵にまわしても
「……友達とは?」
先生が椅子に座るように促してくれたけど、あたしは首を振ってドアにもたれたまま返事をする。
「とはって、何ですか」
「友達とは、どうなの?」
あくまで普通の会話のように先生は机の資料を片付けているけど、それも気にしてたんだろうか。
……そういえば、友達ごっこって言われたっけ。言われる前に脇腹に肘テツくらわせたけど。
「普通です、別に何事もなく」
「気が合わなくても?」
「……先生って、」
「ん?」
「いえ、何でも……」
まとめた資料とファイルを引きだしや棚にしまう先生を眺めながら思う。
『自分をごまかし続けるのも、逃げ続けるのも、寂しくない?』
先生は最初から、分かってたんだろうか。
あたしは頑張ってたつもりだけど、心のどこかで家での居場所を諦めてたことに。学校で自分を誤魔化していることに。
偽った自分で作った居場所に寂しさを感じていたことも、分かってたのかな。
ミキ達といる美月は所詮嘘っぱちの存在で、素なんて半分も出してないと思う。
興味のない話題に相槌を打って、面白くもないのに笑って。
気が合わないと思いながら一緒にいるあたしは、きっと弱虫だ。
……先生が前に、楽しんでるっていうより、楽してるように見えるって言った時。
アレは本当に図星だったから、怒ったんだと今なら思う。