世界を敵にまわしても
「っ黒沢さん!」
バシャッと、大きく踏み出した彼女の金髪が揺れた瞬間、あたしは声を出していた。
振り向いた黒沢さんに思わず息を呑んだけど、慌てて傘の柄を握り締めて駆け寄る。
わずかに濡れた黒沢さんの頭上に傘を掲げると、やっぱり2人分雨を凌げる大きさの傘であった事にホッとした。
ジッと見下ろされてる事に気付いたのは、その後。
「あ……濡れちゃうと、思って……」
胸下まである金髪は相変わらずストレートで、太めに入ったメッシュが燃えるような赤色。
「珍しいね。アンタでも遅刻すんだ」
喋った……!
「寝坊でもしたの」
「や、目覚ましが壊れてただけ」
「何ソレ、おもしろ」
そんな妖艶な微笑み見せられても、緊張するんですけど……。
「ありがと、諦めてたから助かった」
あたしの手からサッと柄を取り上げる黒沢さんは、「持つ」とだけ言って学校の方へ体を向けた。
遠慮する暇もなく、あたしは黒沢さんと並んで歩き出す。
あたしも163センチあるんだけど、黒沢さんは170近くありそう。
モデル並みに細いし、横顔だけでも綺麗な顔をしてる。
バサバサと言うより、スッと長い睫毛は均等にマスカラが伸びてて、高い鼻に白い肌。
頬に乗った淡いオレンジ色のチークが、モノクロのメイクを際立たせている。
……そのへんの芸能人より綺麗だ。あんまりテレビ見ないけど。