CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
「スズの音をキーボードから出して、時間に余裕があれば、トークタイムの時に、余興でラップでクリスマスソングをファンに披露出来たらと考えています。」
『わかった。
じゃあ、オープニングから通して演奏してくれ。』
「わかりました。」
と言うと、皆スタンバイして、演奏が始まった。
~♪~♪~♪~♪!
『OK!
だいたいの流れは分かった。
森本君、キーボードでSEを入れながらの演奏には無理が有るな!
要所要所に入れなければいけないから、演奏がおろそかになっていたぞ。
特殊効果は天道を貸してやるから、彼にSEを任せたらどうだろう!?』
「良いんですか?
助かります。」
『どうせ、新星MUSICの音響スタッフ達がサポートするんだからな!
彼等より天道の方が、実力的には上だぞ。
なんて言ったって、俺が9ヶ月近く毎日叩き込んだんだから、片手間で遣っているような音響スタッフよりは感覚が鋭いぞ。
長年遣ってきましたみたいに、中途半端な実力の上にあぐらをかいている奴ばかりだからな!』
「そうなんですか!」
『天道は感覚も鋭い上に、実力もある。
その上、教えた事はちゃんと吸収して、自分だけの物にしている。
いずれ、彼は最高の音響スタッフになると思うよ。
でもさ、この事は天道には言うなよ。
ここで天狗になっても困るからな。』
「ハイ。
でも、本堂さんが人を褒めるなんて、初めて聞きました。」
『バカ野郎、俺だって褒める時は褒めるさ。
但し、本人には直接誉めないだけだ。』
「じゃあ、西条店長も優秀な人材ですか?
本人には言いませんから、教えて下さい。
いつも、ケンカばかりしているし、西条店長の編集にケチ付けているのを見ているんですけど…。」
『あぁ、彼はミュージシャンとしてはイマイチかもしれないけど、ミキサーとしては天才だよ。
ただ、何か知らないけど、彼を見ていると無性に腹がたつんだ。
俺がやろうしたミキシングの設定を俺がやるより先にやっちゃうんだから、ついつい文句付けて仕舞うんだよなぁ。』
「本堂さんって、子供みたいな事を言うんですね!
でも、だからこそお互いに高めあっているんですね。」
『まぁ、そう言う事にしとけ。
西条には絶対に言うなよ。』
「‥それは、わからないですよー。」