CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
小柄で華奢な玲子さんは、高校時代にここでアルバイトをしている内に、恋に落ちたそうだ。
一見して親子にも見える二人は、とってもラブラブで、見ていて微笑ましい。
そんな、淳治さんと玲子さんに銀細工や、皮製品の扱いを聞きながら、作りたい物を想像していくのは、とっても楽しかった。
ソナは、シルバーでアルファベットを削り出して、それを皮で作った太めのブレスレットに、裏から鋲で打ち付けていた。
俺は、シルバーでクロスのネックレスを作ってみた。
クロスの中に、細かい模様と文字を刻み込み、裏にハングル文字で、
《オンジェカジガサランヘヨ
チャンス》と入れた。
(いつまでも愛してるよ)って意味なんだが、英語や日本語で彫るのは、照れ臭いので、ハングル文字で入れたんだ。
ソナを見たら、まだまだアルファベットの削り出しに、時間が掛かりそうだったので、もう一品作ることにした。
濃い茶色の皮で、ショルダーバッグを作ることに。
これも、ネックレス同様ソナにプレゼントする為に、頑張って可愛いのを作りたい。
淳治さんのアドバイスを受けながら、裁断機とカッターナイフを駆使して、設計した型紙通りに、皮を切り出していった。
生まれて初めてミシンを使うんだが、普通のミシンよりも、明らかにデカくて、しかし繊細な感じがした。
上糸や、下糸を、皮の色に併せてセットして貰い、いざ挑戦だ。
と思った瞬間、送りの速度と針の上下運動のタイミングが合わず、革製品用のミシン針を3本も折ってしまった。
淳治さんが、
『チャンス君、落ち着いて!
ミシンの下には、自動的に皮を送り出す機能が付いているんだから、無理に押さなくても良いんだよ。
手を添えて、縫い目が曲がらない様に、軽く補助してあげるだけでいいんだから。
肩の力を抜いてごらん。
ギターだって、そんなに肩に力が入りすぎていたら、巧く弾けないだろう!?
それと一緒だよ!』
「分かりました。」
もう一度、今度は力を抜いて、曲がらない様にだけ注意して、ゆっくりとスタートペダルを踏み込んだ。
今度は、巧くいった。
『その調子だよ!チャンス君。』
「だいぶコツが掴めてきました。」
『後は、カーブの部分だけど、ゆっくりと一針一針縫うように。
慌てなくても良いからな。』