CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
3時間ほどで、ようやく入国ゲートをくぐって出てきた。
空港ロビーまで出てくると、おもわず嫌な気分になった。
案の定、一人の男性が俺に近づき日本語で、
『お兄さん、観光ですか!?
タクシーどうですか?
安いですよ!』
とほざいている。
どう見たって、タクシーの運転手には見えない。
そうです。
この空港内で客引きをしているのは、韓国マフィアの息の掛かった《雲助タクシー》なんだ。
最近、特に目につく。
カタコトの日本語で近づき、安いですよとウソを言って、日本からの観光客から、通常のタクシー料金の2倍の金額を要求してくるヤカラである。
だから、空港側も警備を強化して、取り締まってはいるのだが、私服で行動しているので、全ては取り締まれないのが現状である。
1年半前にも、見かけたが、本当に鬱陶しい。
だから俺は、日本語で、
「誰が、お前みたいなボッタクリタクシーになんか乗るかよ。
日本人の皆さん、タクシーは、空港の外にあるタクシー乗り場から乗りましょうね!
私服でキャッチしてくるタクシーは、ボッタクリですから、気を付けて下さいね。
今、俺の目の前に居る、この人もその仲間ですからね。
韓国マフィア絡みですから、恐いですから。」
と、大声で叫んだ。
すると、日本人観光客から拍手喝采である。
この雲助タクシーの運ちゃんは、ハングル語で、
『お前、何を言ったんだよ。』
と、キョロキョロと回りを見渡しながら、独り言を洩らした。
だから、俺もハングル語で、
「韓国マフィア絡みの雲助タクシーだから、高い料金を請求されるよ!
タクシー乗るなら、外のタクシー乗り場からどうぞ!
って教えてあげただけだよ。」
『ふざけた真似を!』
「息巻いてるのは良いけど、空港警察の人がこっちに向かってるよ。
早く逃げないと、捕まっちゃうんじゃないかなぁ。」
と、ふざけた口調で言うと、苦虫を潰した様な顔をして、ロビーから出ていった。
それを横目で見ながら、空港警察の人に視線を向けると、必死になって彼等を追いかけて行った。
10人以上の雲助タクシーの運ちゃん達は、蜘蛛の子を散らした様に走り去り、自分達が乗って来たバンタイプの乗用車に乗り込み、去っていった。