CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
「そんな事、別にどうだって良いじゃんか!
俺を痛い目に合わせに来たんだろ。
それも一人でノコノコと!」
『バカにするなよ!
こう見えても、中学3年迄テコンドーをやっていたんだから、お前みたいなヒョロッとした奴なんか、10秒も有ればのたうち回ってるさ。』
「テコンドーかぁ。
止めといた方が良いと思うよ。
俺さぁ、10才の時に誘拐された事が有るんだよねぇ。
それ以来、親父が俺にボディーガードを2人付けちゃったんだ。
何かさぁ、大袈裟っぽいから嫌だ!って言ったら、それからは俺の目の前からボディーガードが居なくなっちゃったんだ。
だけどさぁ、俺の見えないところに必ず彼等が居るんだよ。
日本でも、韓国でも。
後さぁ、誘拐事件以来、自分の身は自分で守れる強い男になろうと思ってさ、空手や柔道や剣道も習ってたんだよね。
ついでに俺、テコンドー4段だから。」
『そんな事、誰が信用すると思ってんだよ。
そんな事言って、俺がビビるとでも思うか!?
だったら掛かって来いや!』
「止めとこうよ。
ホントにキム氏、怪我するから。」
『来ないなら、こっちから行くぜ!』
と言って、右中段の突きと左中段の突きが交互に、俺のみぞおち目掛け打ち込まれた。
しかし、それは俺にかする事無く、空を切り、その後に間髪入れずにやって来た左上段回し蹴りが、俺の右こめかみを目掛けてくる。
しかし、やっぱりそれも虚しく俺の目の前を通過して行った。
焦った男は、一旦バックステップを踏んで、半歩間合いを広げたが、その瞬間左足で地面を思いっきり蹴って70cm程ジャンプして、右足で再び回し蹴りを入れてきた。
残念ながら、この男の実力は、かなりレベルが低かった。
勢い良くジャンプして、虚を付く攻撃は、素人には通用するかもしれないが、まるでスローモーションだ!
軽く転身して、円を描く様に片足だけ移動させて、難なくかわせたのだから。
「そんなもんか?
やっぱり大した事無かったみたいだな。
俺が本気を出したら、多分2秒掛からずに、あんたは失神してしまうよ。
それでも、まだ遣るのかい!?」
『うるさい!
これから本気を出すところだ!』
「じゃあ、本気を出してみな。
今度は、こっちから行くよ!」
と言って俺は、前屈立ちで構えた。