CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



『皆、最初はそう言って、だけど名前言ったら必ず笑いやがる…。』


「それは、そいつらがバカだからだよ。

せっかく両親が、一生懸命考えて付けてくれた名前を笑ったりなんかするもんか。

笑ったら、10万ウォンあげるよ。」


『マジで!?

じゃあ、言うけど俺の名前は、キム テギルって言うんだ。』


ヤバい!

一瞬笑いそうになっちゃったぜ。


テギル…!?

今時!?


まぁ、確かに縁起の良い名前だけど、この男には名前負けでしょう!


「………大吉(テギル)良い…名前…だな。」


『何だよその間(ま)は!?』


「別に…。

で、テギル、どうしてマフィアに入ったの?」


『だから、どうして今日会ったばかりのあんたに、そんな事話さなきゃいけないんだよ。

あんたは、マフィアが恐く無いのか?』


「う…ん……、怖くないと言えば嘘になるかな。

でも、テギルの事は怖くないから。」


『大きい声でテギル、テギルって言うなよ。』


「テギルにテギルって言って、何が悪いんだ。

なぁ、さっき俺にも事情が有るんだとか言ってたよな!?

マフィアに入った事情って何なの?」


『……本当は俺、マフィアに入っている訳じゃ無いんだ。』


「やっぱりね!

そうじゃ無いかと思ってたよ。

本当にマフィアなら、あの空港の件で追いかけて来るなら、絶対に一人じゃ来ないもんね。

それで!?」


『俺のアボジ(親父)は、俺が中学校を卒業して、直ぐに亡くなったんだ。

両親が小さな食堂を経営していたんだけど、春の時期には、行楽弁当の出前もしてたんだ。

配達の途中で事故に合って…。

だから、俺は受かってた高校も行かなかった。

俺ん家、そんなに裕福じゃ無かったし、食堂をオンマ(母ちゃん)一人でやるのは大変だから。

それからは、オンマと二人で食堂をやって来た。

18才になって直ぐに、俺は車の免許も取った。

そうすれば、一度に沢山の弁当を配達出来るし、たまにはオンマを連れて温泉にも行けるから。

でも、オンマはその頃、急に体調を崩して入院したんだ。

精密検査の結果、肝機能障害で、肝移植しないと助からないとドクターに言われたんだ。

手術代やら入院費用で、2500万ウォンも掛かって…。

ドナーは、タイミング良く直ぐに見つかったんだけど、金が無くて…。』
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