CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 


「それで、悪事に手を染めたって訳か!」


『そうじゃないんだ。

死んだ俺のアボジ(親父)には3才上の兄貴が居るんだ。

その叔父さんが、アボジが亡くなった時に、俺達家族の面倒を見てあげるし、俺を大学まで行かせるって言ってくれたんだよ!』


「じゃあ、どうして進学しなかったんだよ。」


『オンマが断ったんだ。

マフィアの世話になんかなりたくないって言って。』


「その叔父さんが、ヤンウンイ派って訳ね!」


『ヤンウンイ派の下部組織で、ソバン派の親分をしている。』


「ソバン派の親分って言ったら、金 永彰(ヨンチャン)親分が、テギルの叔父さんなのか!」


『チャンス、あんた何でそんなに詳しいんだよ。

本当に、一体何者なんだよ。

いい加減に教えてくれよ。』


「まぁ、それはおいといて、続きを聞かせてくれよ。」


『………、とにかく、オンマはマフィアがきらいだから、世話にはならない。私がちゃんと俺を育てるから、私達に関わってくれるな!って言って、断り続けていたそうだ。

でも、オンマが倒れた時に、俺が頼れるのは叔父さんしか居なかったんだよ。

それで、叔父さんのところに行って、オンマの入院費用や手術代の2500万ウォンを借りたんだ。

叔父さんは、返さなくて良いからって言ってくれたよ。

亡くなった弟の家族の面倒くらい、みさせてくれよって。

もっと頼ってくれって。』


「まぁ、義理や人情に厚い人だから、間違い無く、無償で面倒をみてくれるだろうな。

それで、どうしてそれと雲助タクシーと繋がるんだい?」


『叔父さんは、返さなくても良いからって言ってくれたけど、やっぱりそういう訳にいかないっしょ!

2500万ウォンって言えば大金だよ。

それをポンって出してくれた叔父さんに、少しずつでも返そうと思って…。

でも、俺は中卒だし……、そんなに簡単に就職も出来ない。

オンマも元気になってきてるから、退院したら、また食堂も再スタートさせるって言ってるし。

で、叔父さんの事務所に出入りしている若い衆の一人に、何か割りの良い仕事が無いかなぁって相談したら、空港タクシーの話を持ち掛けられたんだ。

俺達の事務所の名前を使って良いし、何か有れば守ってやる。

その代わり、毎月100万ウォンを上納しろって。』





 
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