CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



「100万ウォン!?

そんなに払ったら、稼いでもお金なんて残らないじやんか!」


『だから、法外な金額を観光客からせしめて、朝から晩まで運転だよ!』


「それで、少しずつでも返済したとして、叔父さんは喜ぶと思うか!?」


『‥‥‥‥。』


「もっと考えて行動をしないと、オモニ(母親)にも悲しまれるし、叔父さんにだってガッカリされるぜ。

せっかく無償で出してくれたのに、自分の甥っ子が馬鹿なこと遣ってるって知ったら!」


『…だよなぁ…。』


「その若い衆って言うのは、どんな立場の奴なんだ?」


『ソバン派では、下の方だけど、それでも舎弟が10人程、彼の下に付いている。

アニキ風を吹かしているけど、それでもまだパシリだよ。

だから、アニキが事務所に毎月上納しているのは、俺等が稼いだ金だよ!

あの人自身には、ケンカ以外取り柄なんて無いからな。

ただ、腕っぷしだけは強いから、怖くて俺達は毎月100万ウォンを渡すために空港タクシーをやっているんだよ。』


「テギル、お前はそれで良いのかよ!?」


『仕方ないじゃんかよ!

後ろ楯無しで、危ない橋なんて渡れないし、学歴の無い俺が叔父さんに金を返すにも、仕事が無いんだから…。』


「叔父さんは、返さなくて良いって言ってくれてるんだから、甘えりゃ良いじゃんか。

仕事だって、真剣にさがしゃあ有るもんだぜ。

でも、食堂が在るんだから、お前が頑張って立て直せば良いだろう。

もうすぐオモニも元気になるんだろ!?」


『分かってるよ、そんな事…。

でも、一度アニキが口をきいてくれた仕事だから、勝手に辞めたら、いくら親分の甥っ子だからって、弛めてくれるかどうか、わかったもんじゃ無いんだから。』


「お前は、どうしたいの?」


『………出来れば、ちゃんとオンマと食堂をやって、普通の暮らしに戻りたいさ。

でも、オンマは俺が叔父さんからお金を借りた事を、良く思って無いからな。』


「じゃあ、これから一生懸命食堂で頑張って、毎月少しずつでも返済すりゃ良いじゃんか。

俺が、そのアニキって奴と話を付けてやろうか!?」


『無理だね!

気の短いアニキだから、そんな事したらチャンス、あんたがやられるよ。』


「心配無いよ。

ソバン派の事務所なら、こっからも近いから、今からでも呼び出しなよ?」
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