CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
本当は、俺から金親分に電話を一本入れりゃ済む話だ。
でも、アニキって言われてる徐氏って奴をぶん殴ってやりたくなって、呼び出して貰った。
普通、堅気の人間を、この世界においそれと誘い込んで良い訳無いんだから。
その上、その堅気から上納金をせしめる奴なんて、マフィアの風上にも置けない。
俺達は、公園で20分程待っていたら、入り口に一台のワゴン車が止まった。
中から、バカデカイ男と、見るからに頭の悪そうな20才くらいの子分が3人降りて来た。
その後ろには、見覚えの有る黒服の2人組が、目を光らせていた。
やはり、アボジ(親父)の付けたボディーガードは、今でも俺の近くにいたんだ。
でも、こいつら4人くらいなら、俺一人で楽勝だろう。
『誰だあんた!?』
いきなり睨み付けて、低い声で俺を威嚇してきた。
そんなんでビビって仕舞う程、俺はヤワじゃない。
普段は温厚だが、いつも実戦の格闘技ばかり遣ってるから、いざという時には自分でも驚くほど冷静になる。
「あんたが徐氏か!?
テギルから手を引いて貰うぜ!
こいつは、金親分の甥っ子だが、堅気なんだよ!
お前等の世界に引き込むな。」
『何、ヒーロー気取りでほざいてるんだ。
こいつは、俺の大事な稼ぎ手なんだよ。
お前が首を突っ込んで来るなら、命は保証しないぜ!?』
「ゴチャゴチャうるせえんだよ。
お前が手を引かないんだったら、そっちこそ痛い目にあうぜ。
それに、この事金親分は知ってるんだよな。
もし、親分の知らないところで、甥っ子にこんな事遣らしているのがバレたら、あんたも唯じゃ済まないはずだが…。」
『‥‥‥‥。』
「黙っていると言うことは、金親分はこの事を知らないんだよな。
今なら黙っといてやるぜ!」
『その必要は無い。
今からあんたは俺に半殺しにされるんだからな!』
「やれるもんなら遣ってみな!?」
『オイ、お前等!
こいつをフクロにしてしまえ!』
そういうと、若いチンピラ子分3人衆が俺を囲んで、ポケットからバタフライナイフを取り出した。
下手くそな手つきで、ガチャガチャとバタフライナイフを開いたり閉じたりさせている。
見ていて危なっかしい限りである。
「ナイフを持ってのケンカなら、容赦しないからな!」