CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
受付カウンターには、いつも見る女性が座っている。
直ぐに立ち上がって、俺にお辞儀をした。
近づいて行くと、
『チャンス様、遅かったですね!
社長が心配されてましたよ。
5階の社長室で御待ちになっておられます。』
「わかりました。
それでは、内線で伝えておいて下さい。
今から直ぐに向かいますので。」
『かしこまりました。』
と、もう一度深々とお辞儀をしてきた。
『マジで、お前のアボジの会社なんだなぁ。
ホッとしたよ。
でも、急に話し方まで変わって仕舞うなんて…。』
「さっきまでの事は喋るなよ。
って、まぁ、多分ボディーガードが連絡入れたとおもうけどな。」
『ボディーガードの話って、本当の事だったんだ!?』
「さっき徐氏が乗って来た車の後ろの方に、黒いスーツを着た2人組を見なかったか!?」
『あぁ…!
もしかして、あの2人が‥‥‥‥。』
「今更だろうが!
仮に、おれが無抵抗だったとしても、テギルは腕をへし折られていただろうよ!」
『恐ぇ~!』
と話ながら、エレベーターで5階に着いた。
社長秘書が立ち上がって、またもや深々とお辞儀をして、
社長がお待ちです。
と言って、社長室へ通された。
「あぁ……!
アボジ、まだこのパネル外して無かったのかよ。」
『それが2ヶ月ぶりに会った父親への第一声かよ!』
「お久し振りです!
元気にしていましたか?
って、これで良いでしょ。
オモニ(お袋)は!?」
『ヨンミちゃん(お袋の事)は昨日無事に着いたよ。
今は、俺の実家でくつろいでいる頃だよ。
ところで、隣の彼は?
新しいタレントか?』
「この白々しさが良いねぇ!
ボディーガードから聞いて、一部始終知っているんじゃないですか!?」
『ウン…知っている。』
「金親分の甥っ子だって。」
『テギル君か!?』
『エッ!
…どうして俺の事知っているんですか?』
「僕と彼は同級生だもん。
小学校から高校まで一緒に遊んでいたよ。
因みに、彼にケンカで負けたことが無いぜ。」
『‥‥マジカヨ‥‥。』
「何か言ったかい?」
『いいえ、何も。』
「良く今でも話を聞くぜ。
可愛い甥っ子が、俺を頼ってくれて、嬉しかったって泣いてたし。」