CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
その晩は、俺はテギルと一緒にフトンを並べて、色々と話した。
日本でやってるバンドの話や、彼女の話。
テギルには、同じ年の彼女がいるそうだ。
彼女は大学生で、今はソウル大学の2年生だって。
小さくて可愛いんだって、ノロケまくっていた。
彼女は、少しだけ日本語を話せるそうだ。
だから、テギルも少しだけ話せる。
だから、仁川空港で日本人観光客に声を掛けて、タクシーをやってたんだって。
翌朝、目が覚めたらテギルはもう起きていた。
オモニ(お袋)と一緒に、チョンポクチュ(アワビのお粥)を仕込んでいた。
俺は、洗面所で歯を磨き、顔を洗ってから、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出した。
グラスに注いで、それを飲みながらリビングに行くと、ハラボジ(お祖父さん)とアボジ(親父)が何か話していたけど、俺が行くと急に二人して黙り込んだ。
何か怪しい…。
けど、昔から良く見る風景でもあった。
昔から二人でコソコソ話しているんだ。
俺に聞かれたらマズい話なんだろうから、あえて聞かない事にしている。
「ハラボジ、アボジお早うございます。」
『オゥ、チャンス!
お早うさん!』
「まだ6時半なのに、皆早いですね。」
『まぁ、今日は大事なパーティーが有るからな!
朝飯食ったら、直ぐに準備しておきなさい。』
「わかりました。
ハラボジも出席するんですか?」
『もちろんじゃ。
ワシの息子の会社なんだから、親として祝って遣らなくっちゃいけないからの。』
「ハラボジ、今日の俺の運勢を見てくれますか!?」
『どれどれ。』
と言いながら、俺の頭の後方に視線を向けて、それからおもむろに上を向いて目をとじた。
『今日のチャンスは、最高の一日で、思いもよらないハッピーが舞い降りて来ると出ておるぞ!』
「相変わらず適当な事ばっかり言ってるんですね。」
『適当なって何じゃ!
チャンスは、ワシの占いを信じて無いじゃろ。』
「はい!」
またしてもキッパリと返事した。
『全く~!
まぁ良い。
その内、信じる時が来るからのぉ!
フォッ フォッ フォッ…』
そんな日が来るとは思えないが、
「そうですか。」
と、曖昧に相づちをうっておいた。
そこへオモニが、