CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
俺は、社長の息子だから、何か話さないといけないそうだ。
一応原稿は、会社に用意して有るそうだから心配無いって言ってた。
俺は、スーツケースを開き、日本から持って来た黒のタキシードに着替えた。
テギルも、俺のスーツを着て、髪の毛を手梳で後ろに流し、ムースで固めていた。
良く見ると、なかなかの男前だ!
俺もワックスで、いつものツンツンヘアにして、タキシードの胸ポケットにXYZのハンカチを差し入れ、端をポケットの外に少し覗かした。
左手には、ソナのお袋さんから頂いたフランクミュラーの腕時計をした。
それから40分後、俺達は新星MUSIC本社の社長室に在る黒皮のソファーでくつろいでいる。
スピーチの原稿は、既に読んで頭に叩き込んだ。
それを見ていたテギルが驚いていた。
だって、原稿用紙にビッチリと書かれてある内容を、ものの15分程で暗記したからだ。
今日は、6月6日。
新星MUSICの20周年記念だ。
本社の、別館2階の大広間でパーティーとイベントを企画しているから、その隣に在る控え室に移動して待機中。
間もなく11時になる。
最初はアボジとオモニとハラボジが部屋から出ていき、現在部屋には俺一人。
テギルは、既に大広間の会場で席に着いているそうだ。
そして、遂にアボジが部屋にやって来て
『チャンス、出番だよ!』
と言いながら、俺のタキシードの腰ポケットに何かを入れたんだ。
「何を入れたの?」
って聞いたら、指輪って言う。
何故に指輪を!?
と色々と疑問はあるが、とりあえず会場に通じている短い通路に出た。
な…なんと!
そこにはソナの姿があった。
「ソナ!
どうしてここに居るの?」
『チャンスオッパを驚かそうと思って、20周年記念パーティーに招待されてたのを黙っていたの。』
「マジでビックリしたよ!
じゃあ、いこっか!」
『うん。』
そして、扉を開けて更に驚いた。
そこには、KYUやXYZのメンバー、ソナの両親やヒロや薫までいた。
そこでアボジがマイクの前で、
「本日は、私の息子のチャンスと、韓日物産の林氏のご令嬢のイム・ソナの婚約披露パーティーにご出席承り、誠に有り難うございます。
縁あって‥‥‥‥。」