CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
と返信を打って送信した。


~♪~♪~♪~♪~

俺達は今、●丸にやって来た。

受付カウンターで人事の佐々木部長に連絡をしてもらったら、3階の一区画に設けられた応接室に通された。

『君がうちの姪っ子の同級生の高山君かぁ。』

「はじめまして。
今回は無理言ってすいません。」

『いゃ、構わないよ。御客様も喜ぶんじゃないかな。』

「そう言って頂けると嬉しいです。」

『彼が今度メジャーデビューする韓国の歌手かい!?』

「はい。まだ芸名は決まって無いのですが、本名は朴需(パクユ)って言います。」

『なかなか良い顔しているな。どんな歌を歌うんだい?』

「ハジメマシテ。パクユト申シマス。
ワタシハ ヒップホップカラ バラード 歌謡曲ヤ ロック ソシテ民謡モ演歌モ歌イマス。」

『これは大したもんだ。日本語の発音もきれいだな。

幅広いジャンルの音楽が出来るんだな。いつか、デビューしてからうちの屋上のステージでも歌って欲しい。まッ、小さいステージだけどね!』

「ハイ。コチラコソ ヨロシク オ願イシマス。」

『じゃあ、買い物に来ているお客様の邪魔にならないようにだけ気を付けて頑張ってくれたまえ。』

2人「有り難うございます。」


時刻は現在夕方の5時過ぎ


1階のホールには、買い物客が大勢押し寄せ、ユー君の表情も何気に堅くなってきた。

俺達は、吹き抜けになっている2階から1階を見下ろしている。階下には、地下の食料品売り場へ行くためにエスカレーターに乗る人や、1階フロアへ流れる人、ベンチで休憩している人と、かなりの人数が、このデパートには流れ込んでいる。

「さぁユー君、

MY LOVE

歌ってくれ!」

『ワ…ワカリマシタ。』

♪♪~!

「誰も聴いてくれないよ。そんな小さな声じゃ。」

『こんなところで歌うのは初めてなので…』

「歌手なら、どんなところでも歌えないと、歌手としてやっていけないだろ!」

『…わかりました。頑張ってみます。』

♪♪~!

「もっと声を前に出して!」

♪♪~!

『誰も聴いてくれません…』

「だったら、もっと自信を持って!

ユー君の歌声は、スッゴク素晴らしいんだから。」

『やってみます。』

♪♪~!

「何人か立ち止まって聴いてくれてるじゃん。」

『そうですね。』

「でも、それだけなんだよな。」
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