CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
チャンスの怒鳴り声に臆したのか、まだ何か言いたげのバカ息子こと金井克己(カナイカツミ)は、何度も振り返りながら去って行った。
「ソナ、大丈夫か!?」
『大丈夫だよ。
オッパがすぐに来てくれたし。』
「同じクラスなのかい!?」
『そうだけど、大丈夫だよ。
あいつ、学校では何も出来ない臆病者なんだから。
うちらの学校にね、3年生の怖い先輩がいるんだけど、その先輩が守ってくれるんだよ。』
「知り合いなのか?」
『違うよ!
オッパの大ファンなんだから。
その先輩、ライブでオッパの事初めて観た時に感動したんだって。先輩もギターやってるんだけど、オッパのギターでカミナリに打たれたとかなんとか言ってたよ。
その時から、ソラちゃんと私にはやさしくしてくれるんだよ。』
「もしかして、下心とか有るんじゃないのか!?」
『違うって。お兄ちゃん。
その怖い先輩には、嘘の様な美人さんの彼女がいて、その彼女さんもお姉さんみたいに可愛がってくれるんだよ。』
「じゃあ、あのバカ息子は、怖くて学校では何もしてこないって訳だね。」
『そうだよ。』
「その先輩の名前は何て言うの?」
『スザキ、須崎徹先輩。彼女さんの名前は、利川優子先輩。』
「利川優子!?
トシカワ?どっかで聞いたこと有る名前だなぁ・・・
アッ、利川って言ったら、利川金属の社長さんところの娘が確か、利川優子って言ってたぞ。
ソナ、ソラ、その先輩の彼女って言うのは同胞(キョッポ)だよ。
オモニ(お袋)の同級生の利川さんところの娘さんだよ。」
『へぇ、そうなんだ。明日、学校行った時に利川先輩に話して見ようっと!』
「それじゃあ、そろそろ撤収しますか。」
『そうだね~!オイラ腹減ったじょ~!』
と、今まで静かだったキーボードの森本ジョージがメシメシメシ♪~と口ずさみながら、あっという間にキーボードを片付けていた。
チャンスもギターをハードケースにしまい、エフェクターやシールドをアタッシュの中にしまった。
その頃には、テジュンもベースをきれいにケースに収め、全員で白井ケントのドラムセットを分解して、それぞれケースに収めていった。
スタンドをたたんでいき、全てをレンタルしていたワンボックス車の中に搬送して行った。
シン(天道君)が、そのワンボックス車を運転して、本郷スタジオに戻って行った。