CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=


お昼になって、昼飯を食べる為に、悠輝先生に任せて奥に在る母屋に行った。

台所のキャビネットを開けて、チャンスから貰った韓国のインスタントラーメンの『辛』を食べた。

旨いが辛いのだ。

良く冷えた麦茶を飲んでから店の方へ戻った。

・・・

店番をして貰っていた悠輝先生は、着付け教室の生徒さんの元へ戻って行ってしまったので、またおいらと従業員の梓さんと若菜さんの3人になってしまった。

しばらくすると、お得意様の堀井さんの奥さんがやって来た。

『HELLO!』

「ようこそいらっしゃいませ。
Well come. 」

堀井さんの奥さんはフィリピン人で、
ALISA TENORIO HORIIって言うのが、正式な名前だそうだが、堀井アリサって言う通称名を区役所に登録しているそうだ。

『今日はねぇ娘の那奈ちゃんに着物を作って欲しいの。』

「どういった物が宜しいでしょうか!?」

『そうねぇ…豪華なのが良いわ。

那奈ちゃん、好きなのを選びなさいね。』

「Mom, hindi ko alam eh! (ママ、私よく分からないよ!)」

『Sige, tanon mo na lang. (じゃあ、聞いてみなさい。)』

「すみません。私、着物に詳しくないので、色々教えて下さい。」

『良いよ。じゃなくて宜しいですよ。
日本語上手ですね。』

「もう日本に来て14年になるのよ。

5才の時に日本に来たから。」

『じゃあ、おいらじゃなくて、それでは私と同い年なんですね。』

「ヘェ、大人っぽく見える。
着物に黒髪のオールバック似合ってますね。
背も高いですね!」

『183cm有ります。』

『羨ましいですね!私、156cmしか無いから憧れます。』

「そうですか。

ところで、今日はどんな着物が宜しいですか!?」

『アッ、そうでしたね。
ママはなんでも良いよって言うの。
でも、良く分からなくて…』

「好みは有りますか?

例えば、こちらの手染め友禅なんて如何ですか!?」

『わぁー綺麗。
でも高そう!』

「那奈ちゃん、値段は気にしなくて良いのよ。パパが、那奈ちゃんの誕生日プレゼントだから、好きなのをって言ってたから。」

『Mom(ママ)、こんな高価なのよりも、気楽に着れるのが良いよ。』

「それでは、こんなのは如何ですか!?」
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