自由のギフト
男の子の方は鼻に詰められたティッシュを手で隠しながら目でうなずいた。
僕は動きたくない自分に気合いを入れて玄関へとむかう。
そのあとを大家さんが見送りについてくる。
「ごめんね私のぶんまで買いに行かせて。」
「いえ、そんな事ないですよ、それより何か巻き込んじゃったみたいでこちらこそすいません。」
「気にしないで、気をつけていってらっしゃい。」
「すいません、じゃぁ行ってくるんでノカの事お願いします。」
「はい、行ってらっしゃい」
そして片道三十分の弁当屋向かい、海苔弁当を五つと緑茶を買って帰ってきた。

「お疲れ様ね。」
ドアを開けてくれた大家さんが弁当とお茶を受け取り出迎えてくれた。
「ただいまぁ。」
僕は奥に聞こえるように声をはる。
ノカの「お帰り」のあと何だか楽しそうな空気が伝わる。
「何だか打ち解けちゃったみたいで。」
ニコニコと大家さん。
僕と大家さんがそのわに加わると少し空気が変わる。まだ警戒色が僕には向けられているようだ。
「着がえたんだ、それ学校のジャージ?」
とにかく止まった空気を動かす為に目に着いた事を話しかけた。
「はい、高校のです。」
そっけないけど、少しの笑顔が安心させる。
「まあ取り合えず、あったかいうちお弁当だべよ。はいご注文の海苔弁当です。」
ノカの前に丁重においてやる。
「ありがとう。」
目を輝かせて蓋をあけ「いただきます」とそのまま食べはじめた。
周りもそれに続き、いただきますとたべはじめる。
ノカは夢中でおいしそうにほうばりながら食べる。
男の子は口のなかが切れているのか度々食べながら顔を歪ませていた。
僕がいない間に二人は着替え、傷の治療もすんだらしく顔に着いた泥や血の跡も綺麗になっていた、その分傷が痛々しい。外の日差しには先程まで二人の着ていた制服が干されていふる。汚れを拭きったあとが濡れて斑模様になっていた。
食事中はとくに会話らしい会話もなく、つけっぱなしのテレビの音と時々ノカの「美味しいね。」っていう嬉しいそうな声、それにほうばりながら返す僕の返事ぐらいで静かなものだった。
僕をふくめみんなお腹はからっぽだったみたいです。
< 14 / 24 >

この作品をシェア

pagetop