自由のギフト

食事が終わるとノカは僕に向かって得意気に言う。
｢たかし君はねお兄さんじゃなくてねお姉さんなんだよ。｣
唐突な発言に僕は顔をほころばせる。
確かに僕も思ったよ、気持ちで頷きながらその発言をただそうとした、その時僕が声を出すより早く、女の子が話しだした。
｢こんの　あゆみです私の名前、まだ自己紹介してなかったから。それとこっちがながさわ たかし。｣
｢温井 たちかです。こっちがノカで大家さんのスズキさんです。｣
そういえばまだお互いの名前もしらないままだった。
｢今日はありがとうございました。｣
｢そんな、あらたまんないでよ。｣
僕は何だか照れ臭くて、ノカに助けを求めようとするが隣にいたはずのノカはすでにたかし君の隣に移動していた。
そしてそこからあゆみはポツポツと話しはじめた。今まで溜め込んでいた言葉が少しづつこぼれ落ちていくように、少しづつ、少しづつ。
それが僕への警戒がとれた証でわなく、きっと知らない相手にだから、あえて伝えられる気持ち何だと思った。
｢私とたかしは幼なじみなんです。家も近所で互いの家族も良く知っています。小さい時からたかしは良く女の子みたいだとからかわれていました。その頃はまだ私はたかしの事を守れた・・・。｣
彼女の捕らえ所のない眼差しは力強く、映しだす色はみずみずしく、美しかった。その部分だけが人のものでわない黒く輝く石みたいに。
｢手をださないたかしは、あいつらみたいな奴に傷つけられていく。そんな事私は見ていられないんです・・・。｣
人のなかにある輝く石は一粒、一粒絞りだすように雫を落としていく。
僕はこの状況についていく事が出来ずただ黙っている事しかできないでいた。
たかしもノカの相手をしてはいるがその表情は悲しみを優しさで表すみたいにとても静かで、それが妙にしっくりと彼の空気に馴染んでいた。
｢だから・・・どうして・・・。｣
あゆみの言葉が切れ始めるとたかしはじゃれてくるノカを膝の上に制止、優しくあゆみの背中を撫ではじめた。
｢泣いてるの？｣
ノカが彼女を覗き込んでから僕に聞いてくる。
僕は答えなかった｡
答えない僕にノカはたかしを振り向く。