モテ男と地味子の初恋物語
「放してください。もうすぐ授業が始まります」

紬は必死に抵抗したが、「うるさい!」と言って、俺は紬を強引に引っ張って行った。

何人もの生徒達が、「何ごとだ?」って顔で遠巻きに俺達を見ていた。

俺は昇降口に紬を引っ張って行き、3組の下駄箱の前で紬に靴を履き替えさせた。

俺が靴を履き替える間に紬は逃げるかと思ったが、観念したのか大人しく俺を待っていた。

「行こう?」

「どこへ?」

「ん…誰もいない所」

また紬の腕を掴んだら、「行きますから、引っ張らないでください」と、静かな声で紬は言った。

俺達は並んで無言で歩き、校門を出た。
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