レモンドロップス。
ウソだ・・・。
ウソだ・・・。
世界があたしの前からすうっと遠ざかっていく。
音が、色が、においが、その全てが。
そんな風に頭がぼやけているはずなのに、しっかり握り締めた携帯からの声だけは鮮やかに届く。
「俺も今、あいつのおばあちゃんに連絡もらって病院に着いたとこなんだ」
「それで、陽斗は・・・?」
早く知りたい、でも、知るのが怖い。
携帯を持つ手が震えた。
「・・・分からない。ずっと手術室に入ったきりだから」
「そう・・・」
「彩香ちゃん、今から病院に来られる?たぶん陽斗も・・・」
乾くんはぐぅっと声を詰まらせた。
「陽斗も、彩香ちゃんを待ってると思うから」
乾くんから病院の名前を聞いて、電話を切った。
フラフラと映画館を出ると、もうすっかり日が暮れていた。
そこは大勢の人たちがあわただしく行きかう、いつもの街。
でもあたしは独りだ。
陽斗・・・、会いたいよ。
陽斗のいない世界にいたくないよ。
何かに怖いものに追われるように、あたしは夕闇の中を頼りない足取りで走り出した。