レモンドロップス。
方向音痴のあたしがどうやってたどり着いたのか。
気がつけば、教えられた病院の中にいた。
急患用の裏口で、陽斗の名前を告げて入ったらしいけど、あんまり覚えていない。
夜の病院は薄暗くて、冷たくて、静かだった。
普段は大勢の人が行きかう受付ロビーも、弱々しい明かりでぼうっと照らされているだけだ。
命が守られる場所のはずなのに、なんでこんなにひんやりしているんだろう・・・。
思わず身震いすると、
「彩香ちゃん」
「きゃっ!」
びっくりして振り返ると、ロビーに並んだ椅子の一つに乾くんが座っていた。
明かりに照らされたその顔も、やっぱり薄暗く、弱々しく見える。
「今着いたの?早かったね」
「うん、あの、陽斗は・・・?」
心臓に悪い質問、声に出すだけで胸がキリキリと痛む。
「まだ、手術中。でも運ばれてきたときは意識があったらしいよ」
「そう・・・」
「陽斗のおばあさんとうちの兄貴は手術室の前で待ってる。彩香ちゃんもそこで待ってる?」
そっか、陽斗と乾くんたちは幼なじみだから、家族ぐるみで付き合っているんだっけ。
そんなことにもやっと思い当たった。
乾くんはぼんやりしているあたしの顔を心配そうに覗き込む。
「大丈夫?気分悪くない?」
乾くんのこと弱々しく見えるとか思ってたけど、あたしも相当ひどい顔色をしてたんだろう。
「うん。たぶん・・・」
今は少しでも、陽斗のそばにいたい。
乾くんはフラフラ歩き出すあたしを支えるように、そっと背中に手を添えて、一緒に歩き出した。