レモンドロップス。

浩一郎さんと透さんが自販機に飲み物を買いに行くと、あたしもおばあさんと乾くんの隣に腰を下ろした。

2人の足音だけが、静かな廊下にこだましている。


「あの子、病院に運ばれたとき、意識あったみたいです」

おばあさんはきゅっと両手を握り締めた。

「怪我はひどかったみたいですけど、でも、意識は、あったから・・・」

自分自身に、祈るように言い聞かせている。


「陽斗は大丈夫、陽斗は絶対大丈夫だから」

乾くんはまた怒ったように言うと、おばあさんの手をギュッと乱暴に握った。

「そうね、そうね・・・」


「あたしも・・・!」

廊下に響いた自分の声の大きさにはっとする。

2人も驚いたようにこっちを向いた。

「あたしも、信じてます。陽斗は大丈夫だって」


だって、約束したよ。

映画を見るって。

ずっと見たいって言ってたくせに。

あたしはあんまり興味なかったけど、俺があのバンドのすべてをレクチャーするって威張ってたくせに。


約束守ってよ、陽斗。



ねえ、陽斗、こたえてよ。




その瞬間、手術室の上の表示灯がフッと消えた。

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