レモンドロップス。


陽斗は助かった・・・



全身を振るわせるほどの鼓動がすうっと静まっていく。

胸を痛いほど締め付けていた縄がするすると解けていく。


陽斗は、生きてるんだ・・・


「あ、ありがとうございました」

陽斗のおばあさんが大きなため息をつくように、深く深くお辞儀をした。

薄暗い中でもその頬の赤さがはっきりわかる。


あたしは力が抜けて、思わず壁に手をついた。


「陽斗っ」

遠くから、ペットボトルを抱えた浩一郎さんと透さんが早足でやってくるのが見えた。


「陽斗!」

乾くんの声に向き直ると、手術室から担架のようなベッドが、ガラガラと音を立てて運ばれてくる。


陽斗だ。

最後に会ってから、ほんの1,2日しか経っていないはずなのに、途方もなく長い間離れていたような気がして、一瞬懐かしささえ感じた。


「陽斗・・・」

目の前を、白いシーツに包まれた陽斗が通り過ぎる。

その頭、静かに目を閉じた顔、よく見えないけれどたぶん手足にも包帯が巻かれている。

でも何よりも、陽斗の頬の白さが目に焼きついた。



もう、安心してもいいんだよね?

陽斗、たくさん寝たら、また目を開けてくれるよね?



唇が震えてくるのを必死にこらえる。

陽斗の後を追うみんなの後姿を見ながら、あたしはそのまま立ち尽くしていた。


< 162 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop