レモンドロップス。


気がつくと、時刻はもう9時前になっていた。


「彩香さん、こんなに遅くまでごめんなさいね」

そう言いながら陽斗のおばあさんが戻ってくるのと入れ替わりに、あたしは帰ることにした。

いったん帰りかけた陽斗の叔父さんたちも、急いで引き返してくるらしい。



「また、お見舞いに来てもいいですか」

そう聞くと、

「ありがとうね。陽斗も喜ぶと思うわ」

そう言って優しく微笑んでくれた。

その笑い方がやっぱりどこか陽斗に似ている。

「・・・必ず、また来ます」

つい声が詰まりそうになりながらも、なんとかそう言うと、あたしは丁寧に頭を下げた。




送ってくれるという乾くんたちに、大丈夫だからと断って病院の裏口から外に出た。

今は、なんだか一人で帰りたい気持ちだったから…。



さすがにこの時間になると、秋といっても真冬と同じくらい冷え込んでいる。

「・・・ヘクシュン!」

病院内との温度差に思わず大きなくしゃみが飛び出した、その時、


「え?」

人の気配を感じて思わず振り返ると、月明かりの中に立っていたのは、


「いずみちゃん・・・」


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