レモンドロップス。
病院の中に一歩入ると、昨夜とは違う明るさにあふれていた。
その日の放課後。
あたしは学校帰りに陽斗の入院する病院に立ち寄ってみた。
昨夜はひと気がなく冷たかく感じた病棟も、看護婦さんやお見舞いの来客が行きかい、なんとなくその暖かな雰囲気にホッとする。
ところで、陽斗の病室はどこだっけ・・・?
昨日は相当気が動転してたのか、初めて来た場所のようにキョロキョロしてしまう。
「・・・彩香さん?」
振り返ると、陽斗のおばあさんが花の入った小さな花瓶を抱えて立っていた。
「こ、こんにちは。すみません、突然来てしまって。」
「いいのいいの、忙しいのにありがとうね。」
そう言うと、花のようにふわりと微笑んでくれた。
「いえいえ、そんな・・・。あの、陽斗さんはいかがですか?」
おばあさんは口を開きかけて、一瞬あたりを見回した。
そして自販機やテーブルが並ぶ小部屋を指差すと、
「そこの待合室でちょっと待っててくれる?これ、置いてくるから。」
そう言って足早に廊下の奥に去っていく。
あたしはとりあえず言われたとおり、待合室の椅子に腰を下ろした。
自販機のブーンという音が妙にうるさく感じて、心がざわつく。
おばあさんは、あたしに話があるのかもしれない。
たぶん、陽斗の容態のことで。