レモンドロップス。

ごめんなさい、おばあさんはそう呟くと、ハンカチで目を押さえた。

その様子に胸が痛む。

なのに、

いえいえと、相手を気遣う言葉が出てこない。

頭の中を同じような場面が繰り返し廻るから。



『ギターを弾ければ何もいらない』

そう言って笑った陽斗。

夕焼けの中、あたしの下手くそなトランペットと一緒にギターを弾いてくれた陽斗。

陽斗の後姿には、いつもギターケースがあった。


陽斗の夢が、こんな形で終わってしまうの?

こんなにもあっけなく。

信じない、信じたくない・・・。


「ショック受けたわよね、ごめんなさい。でも彩香さんはとてもしっかりしたお嬢さんみたいだったから。」

おばあさんは潤ませた瞳で、あたしの顔を覗き込むようにしっかりと見た。

「本当のことなんですよね・・・。」

自分に言い聞かせるようにそう言った。


自分の言った言葉がそのまま心に跳ね返ってくる。

あたしはこの事実を受け止めなくちゃいけないんだ。

死ぬほど辛い事実を。


「あたしは陽斗が楽しそうにギターを弾いてるところを見るのが好きで、その姿に励まされてきました。だから辛いですけど・・・、でも陽斗と一緒に受け止めます。」

何とか搾り出したあたしの言葉を聞いて、おばあさんはそっとあたしの手を握った。

「ありがとう彩香さん・・・。実はね、もう一つ聞いてほしいことがあるの。」


ハッとして見ると、おばあさんの瞳からは、大きな涙があふれそうだった。


「陽斗はね、今、言葉が話せないの。」




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