レモンドロップス。
冷たいノブに手を伸ばして、不意にためらった。
正直、怖い。
こんなとき、どんな顔をすればいいの?
なんて声をかければいいの?
『大丈夫だった?』『元気出してね』『早く良くなってね』
用意した言葉が、全部安っぽい言葉に思えてしょうがない。
でも、あたしは陽斗に会いたかった。
何もできなくても、ただそばにいたかった。
もし、君が許してくれるなら。
「先生が言うにはね、陽斗は一時的な失声症らしいなの。たぶん、精神的なショックが原因ね・・・。」
おばあさんはあたしが泣き止むのを待ってから、励ますように言った。
「良かったら、あなたの顔を見せてあげて。少しは気持ちが落ち着くかもしれない。」
陽斗の声が戻ってくるまで待っていてあげてね、その言葉がいつまでも耳に残っている。
ほうっと息を吐くと、おまじないのようにブレザーのポケットに一瞬手を突っ込んだ。
大丈夫、いつものままのあたしでいい。
そしてゆっくりドアノブに手を伸ばした。