レモンドロップス。

放課後、気がつくとあたしはいつもの河原に足を向けていた。

秋の日はつるべ落としって本当だ。

夏の頃はまだまだ明るかったのに、今はもう夕日の最後の光が小さく消えようとしている。


川から上ってくる冷たい風に吹かれていると、全身がビクンと震えるほどの寒さを感じて、思わず足取りも速くなった。


と、かすかなギターの音が聞こえてハッとした。

まさか・・・・。

あわてて後ろを振り返る。

でも、そこには誰もいなかった。


「気のせいか・・・」

見えるのは、枯れ草の広がる堤防だけ。

ここに立っていると、陽斗と楽器を練習し、いずみちゃんを見つけたことがついこの間のような、遥か昔の出来事のような、そんな時間が入り混じった感覚に襲われる。


小さく息をつくと、あたしは携帯電話を取り出した。

発信ボタンを押すと、軽く電話を耳に押し当てる。

「もしもし?」

「彩香?どうしたの・・・?」


いずみちゃんはすぐに電話に出た。

ちょっと驚いたような声は、幼く聞こえた。

そう言えば、いずみちゃんと電話で話すのって、これが初めてだったかな。


「久しぶり。最近いずみちゃんと話してなかったかな~と思って。今大丈夫?陽斗のお見舞いには行ってるの?」

「うん、一度だけね。すぐ帰ったけど」

その声は、なんだか不安そうに曇っていた。


「一度だけ・・・。何かあったの?」

あたしが尋ねると、いずみちゃんは

「うん、なんだか怖くて」

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