レモンドロップス。

いつの間にか季節は12月に入り、期末テストも間近に迫っている。

部活の練習もテスト週間目前で中止になった木曜日、あたしは放課後に病院へ向かった。

これが自分の役割なんだと信じて。


病院の門の目の前を走る県道を渡ろうとして、赤信号に気づいてハッとした。

あぶないあぶない。

あんまり何も考えないようにしてたのに、どんよりした雲のようなものに頭の中を占拠されてたみたいだ。


ぼんやり交通量の多い道路を眺める。

トラックやワゴンや名前の知らない車がゴウゴウと行きかう、その向こう側に。

一人の男の人を見た。

40代くらいのサラリーマンが病院の門を早足で出て行く。

県道を渡ろうとせず、門を出てそのまま右方向に歩いていった。

たぶん駅に向かうんだろう。

なぜだかその姿は奇妙に見える。

なんでだろう。


信号が青に変わり、あたしは考えながら横断歩道を渡った。

「あ、そうか」

渡り終わって病院の入り口をくぐった時、思わず声が出た。



病院へのお見舞いの帰りに見えたのに、あの男の人は、花束を手に持ったままだった。

渡せなかった花束。

その花束を、男の人は大事そうに抱えていた。



< 201 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop