レモンドロップス。
いつの間にか季節は12月に入り、期末テストも間近に迫っている。
部活の練習もテスト週間目前で中止になった木曜日、あたしは放課後に病院へ向かった。
これが自分の役割なんだと信じて。
病院の門の目の前を走る県道を渡ろうとして、赤信号に気づいてハッとした。
あぶないあぶない。
あんまり何も考えないようにしてたのに、どんよりした雲のようなものに頭の中を占拠されてたみたいだ。
ぼんやり交通量の多い道路を眺める。
トラックやワゴンや名前の知らない車がゴウゴウと行きかう、その向こう側に。
一人の男の人を見た。
40代くらいのサラリーマンが病院の門を早足で出て行く。
県道を渡ろうとせず、門を出てそのまま右方向に歩いていった。
たぶん駅に向かうんだろう。
なぜだかその姿は奇妙に見える。
なんでだろう。
信号が青に変わり、あたしは考えながら横断歩道を渡った。
「あ、そうか」
渡り終わって病院の入り口をくぐった時、思わず声が出た。
病院へのお見舞いの帰りに見えたのに、あの男の人は、花束を手に持ったままだった。
渡せなかった花束。
その花束を、男の人は大事そうに抱えていた。